大腸がんの肛門括約筋温存術
大腸がんの手術に、肛門括約筋温存術という手術がありますがご存知ですか?
あまり聞きなれない手術だと思います。
従来の大腸がん手術では、肛門に近い直腸がんの場合、たいてい人工肛門が作られていました。
ところが、最近では、直腸がんの約8割は人工肛門にしないような手術ができるようになってきたのです。
これには『動吻合器』と呼ばれる筒状の機械が使用されます。
これで、がんを切除したあとの短くなってしまった直腸の端と結腸の先を縫合します。
こうすることで、肛門から排便するという本来の機能を、手術後にも保つことが可能になったのです。
この手術を肛門括約筋温存術といいます。
がんが肛門から4センチ以上、歯状線からから2センチ以上離れていれば、肛門を温存できます。
この手術と、更に自律神経温存術の両方を使えば、手術後の機能障害は格段に軽減されます。
最近では、さらに医療が進んできました。
早期がん、または一部の進行がんの場合、歯状線にかかるほどのかなり肛門に近い直腸がんでも、肛門括約筋を一部だけ切除して自然肛門を温存できるようになりました。
これは一部の専門の施設だけですが、すでに行われている手術です。
しかし、患者が高齢の場合には、無理に肛門を残すことで、術後の頻便などの弊害がでることがあります。残念ながら逆効果になる場合もないとはいえないのです。
ですから、この手術法を選択肢とするなら、がんの進行度をきちんと説明し、年齢や社会的活動力もしっかり考慮にいれなくてはいけません。
そして、最終的には、患者本人や家族の希望を踏まえた上で決定することが大事です。